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手話劇「学校童子」

第3幕 「学校童子」

テツは、昼間の事が気になってひとり懐中電灯を持って夜中の教室にやってきました。
くるくるとあたりを一通り照らして、「やっぱり、気のせいか」と思っていると、子どもたちがそーっと入ってきて、テツの後ろへまわり、背中をポンとたたく。
テツ、ひどくびっくりする。
「こないだ土田先生、泣いでだな。」
「土田先生は、この学校の卒業生なんだ。卒業して、先生になって、この村さ帰ってきて、それがらずーっと、この分校にいる。」
「この分校ねぐなってまうんだよ。おらまった通いでえよ。」
舞子が、だまってオルガンのふたを開けて弾き始める。しばらくみんな黙ってきいている。
「ここがさ、なくなったら・・・・・みんなどこか別の学校へ転校するのかい。」









突然あかりがつき、土田先生が入ってくる.
「もう、廃校になって二十年もたづんだものなあ・」
「じゃあ、あんたたち、今この学校にいる先生と生徒じゃないのか。」
「ガッコワラスだあ。」 「ガッコワラスってのは、学校に通ったたーくさんの子どもらの、思い残しから生まれる。卒業の時に「ああすればよがった」「ああせねばよがった」ってうんと思う。それが、いづのまにか、ガッコワラスを産むんだ。」
「じゃ、あんた・・・・・先生も?」
「いんや、おらはガッコワラスではね。」
「先生は、おばけだあ!」

「おらは二十年前この学校が廃校になったその日、モチをのどにつまらせて、それで、死んじまったんだわ。気がついだら、おばけになっとったわ。」
テツは、
「おれの、その、学校童子、も、いる。」
「あんちゃんの思い残しはなんだ?」
「おれは、思い残しなんてなんにもないよ。」
「だったらなして自分のガッコワラスがいるか、なんて思ったんだ。」
「おれ、中学の時、つっぱってたんだよ。馬鹿騒ぎしてると、スカッとしたしさ。」
「中学の卒業式の日、担任の先生が俺の手にこのペンをにぎらせて、言ったんだ。文集読んだよ。おまえの言葉が、ひとつひとつグサッときたよ、って。」
「何て書いだのっす。」
「忘れた、くだらないことさ。だけど先生は、お前は書くことを大事にしろ、力があるんだからって言って、いい歳したおっさんが目に涙ためて、おまえになんにもしてやれなかった。すまない・・・・・って。俺、何にも言えなかった。」
「今がら夢探したらいいべ。人間、命なぐさねかぎり何回だってやり直しでぎっぺ。」
「でも。」
「でもって言っちゃなんねど!でもってばっかり言ってだら、思いは絶対かなわねんだ」
「おめえのやりだいごどは、何なんだ。まずそれを探すごどだっぺ。でも、なんて言って自分を甘やかすもんではね。」